韓国人キム兄との運命の出会い
ベロゴルスクまで残り160km付近を走行していると、幹線道路である韓国人とKTMが視界に入る。すぐさまUターンをして戻り声をかけた。
遡ること数週間前、DBSフェリーに乗船していて、ちょうど東海(トンヘ)に船体が着岸するところだった。船で他国に行くのが初めての経験なので、好奇心から甲板に上がって眺めていた。
着岸する港に視線を向けると1人のライダーの姿に目が釘付けになった。なんだあの人は!?そんな印象を持った。風貌が際立って変だったからだ。ボサボサ頭に髭を蓄えていて、サイズ違いのブカブカレザーを上下に着込んでいる。更にその上に真っ白なオフ車用プロテクターを全身に装着して、左手にはモトクロスヘルメットを手にしていた。
更に彼は乗船してきてもプロテクターを外さない。まるでアメフトプレイヤーが船内を歩いてるみたいだった。食事会場でも、土産物店で会っても常にプロテクターを装着していた。まさか、寝る時も外さないんじゃないか!?と考えたら笑えてきた。
彼の名前はロック。実は勝手にそう呼んでいる。韓国名も教えてもらったけど、難しくて覚えられない。彼のナンバープレートの上に「ROK」とレザーでかたどられていたので、そう呼ぶようにしたら、彼は笑って受け入れてくれた。
冒頭からの続き
名前を交換して話をするのは初めてだったが、互いに当日の目的地がベロゴルスクであったこともあり一緒に向かうことになった。しばらく幹線道路を走っていると、ロシア人バイカー達が路肩で停車しているのをみつけて、ロックが停車して話しかけにいった。自分も合わせて停車した。彼はロシアで出会ったバイカー友達の画像を見せては会話を楽しんでいる。私もつたないロシア語と英語を交えながら会話について行く。どこまでいくんだ?とロシア人から私に質問が飛んできた。パリまで行ったら、次はアフリカを縦断してケープタウンまで行くと答える。誰よりも強い反応を見せたのがロックだった。俺もだと真顔になった。
2人が組むと幸運がやってくる!?
ロシア人達と別れて、ベロゴルスクへ到着した。街を入ったところにガソリンスタンドがあり、真横にカフェが併設されている。互いに宿泊費用を抑えたいという会話をしていたこともあり、テント設営ができるか確認することになった。先頭を走っていたロックが交渉役をかってでた。残った人間がバイクと荷物の見張り役であることは口にせずわかっていた。
渋い顔をして戻ってくるロック。食事はいいけど、テントはダメと言われたようだ。彼の身なりを見ていたのかもしれないと直感し、自分が行けば話がまとまる気がした。ロックに自分がもう一度交渉に行くことを伝えると、タイミングよく従業員がでてきた。用意していたテント画像と、手を合わせて寝る仕草をする。困った顔をみせたが、もう二押しすると許可がでた!!ロックと互いにかおを見合わせて、we are very lucky!と叫んだ。
更に店のオーナーと意気投合して、事務所のいっかくを寝床に確保してくれた。これでテントをはる手間が省けると大喜び、外をみると雨が降り出していた。割愛するが更に幸運が立て続いた。
その晩、これからの旅について色々と話し合った。互いに補完しあえる関係になれると短い時間の中で確信したからだ。最後、2人は一緒に行くべきなのかもと互いに意識していた。
2人の約束
引き合わされたご縁を互いに感じている。運命の導きを確信するためにも、アドレスも電話番号も渡さずに別の道をいこう。もう一度、再会したら2度と離れずにケープタウンまで到達しようと合意に至った。
それからは彼には会っていない。